「受精卵に生えた心臓であなたは確かに息をしていた
5ミリメートルの拍動……
こんな醜い世界にだってあなたは生まれようとしている
目的もなにも持たずに
あなたの産声は震えて白い壁に反響していた
産まれることを躊躇って
世界があなたを裏切ろうとわたしはあなたを裏切らない
忘れないでいて
なにもしなくたっていいから
偉くならなくてもいいから
ここで泣くだけでもいいから
生きてて 健やかに
この世界にようこそ」
かく言うあなたはぼくを置いてこの世から逃げていってしまった
きれいごとばかり遺して
理解されないことが増えた
世間とすれ違うようになった
あの日のあなたと同じく
誰を憎んでいたっていい
人に合わせられなくてもいい
せめてここにいてよ
生きる理由なんてないなら
はみ出しものも生きていいなら
あなたも生きていてほしかった
理由も目的も
この世界にいらない
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